『お父さんがヴァンパイアだ、って言って、月野は信じた?』
「・・・・・・ううん」
きっと、娘をからかう冗談だと思うだろう。
『お前はダンピールで、いつか自分の正体を知る日が来る。だからこそだよ』
辛い現実を受け入れるためには、その世界に放り込んだ方がいいと、父は言う。
『お前は自分を受け入れたかい?』
「わからないわ」
自分は、ヴァンパイアと人間の間に生まれたダンピール。
現実味もなくて、けど笑えもしない。
「でも、私はここにいる」
それだけは、紛れも無い真実。
『それだけで、お父さんは十分だよ。あの人の願いを、月野が叶えてあげる必要はない』
「でもっ」
『怖くなったら、逃げ出したくなったら、いつでも言いなさい。お父さんは迎えに行くよ』
優しい父の言葉は、同時に冷たい言葉に聞こえた。



