この音楽は―――。
「お父さん?」
『久しぶりだね、月野』
優しいこの声は、間違いなく父だ。
嬉しくて、涙腺が緩みそうになる。
『何度か電話をくれたろう? いろいろ忙しくてね』
「いいの。お母さんは元気?」
『元気だよ。こっちの料理を猛勉強してる。白いご飯とお味噌汁が懐かしいよ』
父の言葉に、月野は笑った。
気負いもせず、こうして自然に笑うのは、いつぶりだろう?
『月野、電話の理由はわかってるよ』
父の声が、真剣になる。
ダンピールのことも、祖母の願いのことも、父は知っていたという。
「どうして、私をおばあちゃんに預けようと思ったの? おばあちゃんと仲直りしたいから?」
『そんなつもりはないよ。僕は、音無を捨てたんだ』
そこには、微塵の迷いもなかった。
「じゃあ、どうして・・・・・・」



