「テメッ、十夜!」

「何どさくさに紛れて触ろうとしてんだ、お前は」

「ちょっと、私を無視しないでよ!」


騒ぎ出す3人を眺めながら、月野は開いた本のページをめくる。


(なんか、イメージしてたヴァンパイアと違うなぁ)


こうして見ると、綺麗な高校生が戯れているようにしか見えない。

誰も、ヴァンパイアだなんて思わないだろう。


「・・・・・・?」


不意に、何か視線を感じた。

月野は辺りを見回すが、誰もいない。


(気のせい、かな?)


脳裏に、浦部の顔が浮かんだ。

彼は今、十夜の実家に送られ、その処遇を決められているという。

詳しくは教えてくれなかったが、きっと、月野には聞かせない方がいいと、十夜が判断したのだろう。


「月野、帰るぞ。変態と同じ空間にいるもんじゃない」

「あ、うん。桐条さん、香堂くん、さよなら」