椿はため息をつき、焼けた木を軽く蹴った。
「何してるんだ?」
「・・・・・・別に」
秦の気配に気づいても、振り返る気にはなれない。
「出なかったらしい」
「・・・・・・」
「静貴の死体。出なかったんだ」
重傷を負った静貴が、逃げ延びたとしても、生きているとは考えにくい。
森の中は少し調べただけで、捜索はすぐに打ち切られた。
「消えないのよ」
「何が?」
「あいつを刺したときの感触が。消えないの」
人を刺すのも殺すのも、初めてじゃない。
十夜よりも秦よりも、椿の方が数は多いだろう。
「・・・・・・嫌な感じ」
こういう感覚は、好きじゃない。
椿は目を伏せ、自分の手をポケットに突っ込んだ。
明るみに出すには、少々、血を浴びすぎた手。
「あいつが生きてるのか、死んでるのか。私にはわからないけど」



