十夜と愛理と鷹斗、そして月野。
愛理の言葉に、十夜は静かに頷いた。
「月野は? 怪我したって聞いたけど」
「慧さんと話してる」
「そっか。じゃあ、またね」
また会える。
愛理は笑顔で、十夜に手を振った。
「・・・・・・お疲れ」
紅玉館を出た愛理を、鷹斗が待っていた。
本当は、棺で眠る摩耶を見たとき、悲しかった。
たったひとりの姉。
嫉妬深くて、実の妹にも容赦がなくて、正直、怖かった。
でも、もう会えないんだと思うと、無性に悲しくて、泣いていた。
「偉いじゃん。十夜の前で泣かなかった」
頭を撫でる鷹斗を、愛理が睨む。
「当たり前でしょ! 私が泣いたら、十夜・・・・・・」
きっと、罪の意識に苛まれる。
そんなのは嫌。
恋人になれなくても、愛されなくても、そんな感情で自分を見てほしくない。
“友達”でいたい。
「偉い偉い」
「子供扱いしないでよっ」