ナイフを、心臓目掛けて躊躇いなく突き刺す。
だが、その手を静貴が素早く掴んだ。
「甘いのよ!」
手を掴まれるなんて、予想の範疇だ。
体を回転させて放つ蹴りは、静貴の頭部を見事に直撃した。
「―――!!!」
静貴の体が吹き飛び、ワイングラスが割れた。
燭台が倒れ、蝋燭の炎が広がっていく。
「ふふふ・・・・・・君と心中するのも、良いかもしれないね」
傷はすぐに癒え、静貴は燃え広がる教会を恍惚とした顔で見つめた。
「死ぬならひとりで死になさい」
慈悲の一欠けらさえない、椿の言葉。
静貴は笑いながら、のろのろと立ち上がる。
「こんなにも楽しいなんて、初めてだよ」
今、自分は生きてる。
それを、全身で感じれている。
この瞬間が、永遠に続けばいいのに。
「ゴホッ・・・・・・」
煙りに噎せて、咳が出る。
早目に終わらせないと、自分の身も危ない。



