白く柔らかな腕は、今や深紅に染まり、静貴のなすがままだ。
(逃げ、ないと・・・・・・!)
十夜に血を与えて、まだ回復しきっていない体。
貧血で視界は眩むし、頭も少し痛い。
それでも、ここで殺される事に比べたら、耐えれるもの。
月野は、静貴に奪われたナイフを盗み見た。
(一瞬だけ・・・・・・そしたら、全速力で逃げるっ)
覚悟を決めた月野は、躊躇いを捨てて、静貴からナイフを奪いにかかった。
「!」
驚いた静貴の一瞬の隙を、月野は見逃さなかった。
ナイフを持ち、逃げるために攻撃した。
「・・・・・・ぐぁ・・・・・・!」
「・・・・・・ッ!」
月野のナイフは、本人の意図しないままに、静貴の左目を傷つけた。
血が滴り傷ついた左目を手で覆い、静貴は右目で月野を見る。
「ふふふ・・・・・・君がこんな事をするなんて・・・・・・楽しいなぁ」
左目を傷つけられたというのに、静貴はその顔に、更なる笑みを浮かべた。



