そう言いながら、慧は鍵を取り出し、十夜に投げる。
「これは?」
「今の君に、一番必要なものだ」
気づいた十夜は、鍵を手枷の鍵穴に差し込んだ。
カチッと鳴り、自由を奪っていた手枷は、いとも容易く十夜を解放した。
「―――月野!」
十夜は焦りを隠さず、ベッドから下りた。
「あなたは、来ないんですか?」
動かない慧に、十夜が問いかける。
「君は、月野が好きかい?」
「・・・・・・はい」
「なら、君に任せるよ」
慧は微笑み、十夜を見送る。
自分が行けば、恐らく簡単に娘を助け出せる。
だが、二人の仲を邪魔するような、野暮な真似をするつもりはない。
「いや、何かあったら心配だな。やっぱり、俺も行こう」
とは言え、彼が心配性で娘を溺愛する父親であることに変わりはないのだが。
一滴の涙が、頬を伝う。
腕が痛いのと恐怖とで、涙は一滴落ちると、せきを切ったよう流れ落ちていく。



