ステンドグラスの薔薇は、血のように赤かった。
―――ジャラ・・・・・・ッ。
鎖を外そうと、手枷を壊そうともがくが、自分が傷つき疲れていくだけ。
「はぁ・・・・・・はぁ・・・・・・」
乱れる呼吸が、焦燥感を倍増させる。
摩耶が月野に会う前に。
いや、静貴が月野を殺す前に。
そう思うが、手枷は頑丈で、鎖も無機質に鳴るだけ。
―――ガチャ・・・・・・。
不意に、扉の開く音が聞こえ、十夜は視線を上げた。
「・・・・・・君が、綾織 十夜、かな?」
「あなたは―――」
敵意も殺意も感じない。
容姿の美しさから、ヴァンパイアだろうか?
だが、こんな人は知らない。
「音無 慧、と言えばわかるかな?」
「! 美鶴さんの・・・・・・」
美鶴の息子で、月野の父親。
だが、彼は家を捨てたはず。
何故ここにいる?
「娘を迎えに来たんだが、何やら大変なことに巻き込まれているらしい」



