純粋だ。
狂気も言葉も、何もかもが。
それは、摩耶と似ていた。
「私を呼んだのは・・・・・・」
「奇跡を壊したい。無垢な乙女を穢したい。―――十夜くんは、どんな顔をするかな?」
すべては、この悦楽が続くためのもの。
刹那主義のくせに、どこかで永遠を求めるなんて、我が儘だ。
「さ、触らないで!」
取り出したナイフは、静貴の手によって奪われた。
「あ!」
「危ないよ。君に刺されたら、僕達ヴァンパイアは癒えないのだから」
くるりとナイフを握り直せば、刃が月野に牙を向く。
「大丈夫。殺しはしないよ。今はまだ、ね」
「―――ッ」
包帯を剥ぎ取り、傷口を無慈悲にナイフが切り付ける。
流れ出した血と痛みに、月野は視界を涙で潤ませた。
(痛い・・・・・・!)
白い腕から流れ伝う血を、静貴が優しく舐めとる。
それが、更なる恐怖を煽る。



