まるで、普通の日常のように話す慧は、頼もしくも見え、同時に温和な威厳を醸し出していた。


「美鶴様、伊織様をどうなさいますか? 綾織本家は、まず美鶴様のご意見を聞きたいと」


小声で話す美鶴と小野瀬に、慧は苦笑する。


「伊織には、俺が会いに行こう。椿、君は教会へ」

「は、はい」


椿は慌てて頷くと、早足で美鶴の部屋を出ていく。


「慧、お前・・・・・・」

「久しぶりに会う弟がどれ程成長したのか、見てきますよ」


そう言うと、息子は悠々と部屋を後にする。


「・・・・・・」


美鶴は力無く椅子に座り込み、慧の背中を見送る。

こんなにも急な再会では、冷静さを取り繕う暇さえない。

言いたいこと、聞きたいこと、いろいろあったのに、本人を前にすると、どうでもいいような気になる。


「美鶴様・・・・・・」

「えぇ、わかっているわ」


慧だけを本家に行かせるわけにはいかない。