静貴が後をつけていることくらい、伊織は気づいていた。
それでも十夜にその存在を教えなかったのは、伊織が決して“味方”ではないから。
「さぁ、行こうか」
「あぁ」
太陽に照らされたステンドグラスは、伊織を責めはしない。
そこにはキリストも聖母もおらず、ただ、母の愛した薔薇が輝くだけだから。
日が沈んでも、十夜が帰ってこない。
そのことに気づいたのは、秦だった。
「坊ちゃん・・・・・・?」
「どうかしましたか?」
月野は、十夜のベッドで体を起こし、外を見る秦に問いかけた。
「いえ、なんでもないです。・・・・・・すみません、ちょっと失礼します」
秦は部屋を出ると、緩めたネクタイを締め直し、玄関へ向かった。
「出掛けるの?」
「あぁ。・・・・・・椿」
水差しを手にした椿に、秦が駆け寄る。
「お嬢さんから目を離すな」
「何?」



