十夜は慌てて部屋を出ようとしたが、窓から見える中庭に、人影がいることに気づく。
それが月野だとわかると、十夜は安堵し、迎えに向かった。
「月野」
「あ・・・・・・綾織くん」
顔色が悪い月野は、噴水に腰掛けて十夜を見た。
薔薇のむせ返る香りが、血の匂いを忘れさせてくれる。
月野は誘われるままに、中庭へやって来た。
「寒くないか?」
「・・・・・・大丈夫」
隣に腰を下ろす十夜から、少し距離を取る。
十夜は何か言おうと口を開いたが、何を言えばいいのかわからなくて、開けた口を閉ざした。
「あの人・・・・・・知り合いだった?」
「・・・・・・立花 光彦。俺の従兄弟だ」
虚勢ばかりが立派だと思っていたが、彼は彼なりに、ヴァンパイアについて考えていた。
少し歪んだ理想を描いていたが、今では泡沫の夢だ。
「月野。寒いんじゃないか?」
体が震えているのは、寒いから―――光彦の最後を思い出したから。



