「今行くから、待ってて」
そう言って、椿は窓から飛び降りた。
「は、花村さん?!」
慌てて叫んだが、椿は顔色一つ変えないで、地面に着地した。
これも、ヴァンパイアだからこそ出来る芸当だ。
「椿! 彼女を安全な場所へ」
「わかってるわよ。邪魔よ、どきなさい!」
十人いるかいないか。
周りを囲む咎堕ちは、攻撃されても怯んだりしない。
まるで、生きる屍だ。
「どうしてわからないんだっ。僕は・・・・・・!」
「あ・・・・・・」
月野のすぐ傍に、光彦が移動していた。
手にしたナイフを握りしめるが、彼に突き付ける勇気はない。
「逃げなさい、月野ちゃん!」
椿が叫ぶが、月野は動けなかった。
自分を見つめる光彦の目が、怒りと憎しみ、そして悲しみに揺れていたから。
「何が奇跡だ」
「え?」
光彦の手が、月野に伸びる。



