秦が駆け出し、十夜は深く息を吸い込む。
朧村正を手にするのは久しぶりで、少しだけ気分が高揚する。
「―――!」
咎堕ちが動くのと同時に、十夜は最初の一歩を踏み出した。
中庭から聞こえた雄叫びに、月野は息を呑む。
野性的でありながら、それは間違いなく人の声。
「・・・・・・」
月野は恐る恐る、窓から覗き込んでみた。
「!」
中庭に居たのは、赤い目の男。
ヴァンパイアだとすぐにわかったが、様子がおかしい。
「咎堕ち・・・・・・?」
自然と口から漏れた言葉。
そう多分、あれは咎堕ちだ。
(どうしよう。花村さんは、これに気づいて出ていったんだ)
月野は部屋の扉を見たが、首を振る。
「私が行っても、何の役にも立たない」
言い聞かせるように呟いたが、やはり外が気になる。



