十夜には理解できない。
ヴァンパイアという正体を隠していても、自分達はこの世界で生きていけている。
音無も綾織も香堂も、今や日本を代表する大企業へと成長した。
それの何が不満だというのか。
「あなたも、同じ考えですか?」
「・・・・・・さぁ、どうかな」
伊織が目を伏せる。
感情の見えない笑みを浮かべていた彼が、ようやく見せた心は―――十夜には見えなかった。
「どうでもいいんだよ、そんなこと」
「じゃあ、何故光彦に協力なんか・・・・・・光彦は?」
十夜はその瞬間、あることに気づいた。
伊織は目の前にいるが、主犯とも言える光彦はどこにいる?
「伊織さん、光彦はどこですか?」
「ヴァンパイアにとっての脅威は、なんだと思う?」
「脅威?」
物語の中で言えば、太陽の光、十字架、ニンニク、教会、香草。
いろいろ浮かぶが、十夜達を死に至らしめることはできない。



