「誰かが逃がしたんだな?」
「・・・・・・はい」
十夜は、頭に浮かんだ言葉を振り払おうとしたが、他に誰も浮かばなかった。
「伊織さん、か?」
「・・・・・・いえ、立花 光彦です」
予想もしない名前だった。
あの虚勢ばかり一人前の男が、こんな事を仕出かすなんて。
「あの男が・・・・・・?」
「音無 伊織が、背後にはいるそうです」
「!」
十夜は頭を押さえ、状況を理解しようと思考を働かせる。
「つまり、光彦は伊織さんの命令で動いた、ということか?」
「わかりません。伊織さんを度々、本家へ呼んでいたのは光彦です。光彦が主犯なのか、そそのかされたのか・・・・・・」
未だ不透明な真相だが、議論をしている場合ではない。
咎堕ちが人間を襲えば、取り返しのつかない事態になりえる。
「坊ちゃん。当主は、立花 光彦を捕らえよと。それが無理なら、始末しろ、との事です」



