椿はそう言うと、月野の部屋を足早に出ていった。
「花村さん?」
追いかけようとしたが、出ないでね、と言われてしまったし、足が止まる。
「・・・・・・風?」
微かに髪が揺れて、月野は振り返る。
閉め忘れたのだろうか。
「・・・・・・?」
カーテンが揺れている。
そして、中庭の方から聞こえたのは、狂ったような雄叫びだった。
綾織本家が、慌ただしく動きはじめる。
当主の判断を仰ごうとする者、早く追うべきだと主張する者。
そんな声が飛び交う本家の廊下を、十夜は険しい顔で歩む。
「坊ちゃん!」
「秦か。咎堕ちが脱走したと聞いた。何人だ?」
駆け寄る秦に、十夜は前置きもなく問う。
「詳しい人数はまだわかりませんが、15人程度だと」
「そんな人数を、何故、易々と逃がしたっ?」
声を荒げてしまい、十夜は落ち着くために一つ息を吐いた。



