「大切なのは、お前の気持ちなのです」
自分を偽ってはいけない、と母は言う。
でも、彼女が自分を受け入れてくれなかったら、と思うと、怖い。
「お前が当主にならなくても、可愛い私の息子ですよ」
「母上・・・・・・」
泣きたくなって、十夜は朔の膝に顔を押し付けた。
当主の座になど興味はない。
欲しい奴にくれてやる。
けど月野だけは、叶うのならば、この腕で抱きしめて、自分だけに笑顔を見せてほしいと思う。
「十夜。自分を偽ってはダメよ」
繰り返される母の言葉を聞きながら、十夜は安らかな眠りに落ちた。
十夜が実家に帰ってから、2日が経過した。
夕暮れに染まるバラ園を見つめながら、月野は日記を閉じる。
「・・・・・・はぁ」
ここに来てから、十夜と会わない日なんてなかったから、落ち着かない。
(綾織くん・・・・・・)
どうして、実家へ行く前に抱きしめたいと言い出したのだろう。



