朔の目を見れば、濁りがない。
母は昔から、清らかな人だった。
それが眩しくもあり、安らぎでもあり、十夜は母が大好きだった。
朔の前で、嘘はつけない。
「―――はい」
「良い子ですか?」
「はい。俺は、彼女の前で浦部を殺しました」
朔は浦部を知らないが、黙って十夜の話を聞いていた。
「血で汚れた俺の手。こんな手で彼女を触りたくない。でも、彼女は俺の手を握ってくれた」
「とても大切な子なのですね。是非、会ってみたいわ」
「・・・・・・」
朔の言葉に、十夜は俯く。
「どうしました?」
「俺は、綾織家の次期当主だから」
月野をどれ程愛したとしても、父親が認めるはずがない。
かといって、月野の父親のように家を捨てる覚悟もない。
「十夜」
朔が、十夜を自分の膝の上に横たわらせる。
髪を撫でられると、幼い頃に戻ったような気持ちになる。



