愛理が振り返り、十夜を見つめた。
十夜は視線を合わせ、逸らさなかった。
「俺は、許婚など無いものと思っている」
「でもっ」
「お前は許婚を気にしすぎだ」
十夜の言葉に、愛理は叫ぶように声を放った。
ずっとずっと、溜め込んできた思いを。
「当たり前じゃない! 十夜が好きで、許婚になりたいと思ってたの、小さい頃から」
幼かった自分は、許婚になれば、絶対に結ばれると信じていた。
「それで、ようやく許婚になれた! 姉さんの代わりでも良かったの!」
「・・・・・・っ」
顔を歪ませる十夜に、愛理は思わず口を閉じた。
「たとえ、お前の姉が許婚であり続けたとしても、結婚はしなかった」
いつもの落ち着いた声だが、どこか悲しみのようなものが滲んでいるように思えた。
「十夜・・・・・・」
「俺は、お前を愛してない」
ハッキリと告げると、十夜は愛理に背を向けて去ろうとする。



