RUBY EYE


着物の裾を乱しもせず、美鶴は手についた血をハンカチで拭う。


「申し訳ありません。屋敷に侵入したことに、気づけませんでした」

「構わないわ。これを片付けなさい。後で、綾織の者が取りに来るでしょう」


美鶴は外に目を向け、ため息を漏らす。

いっそ、自分を自我を失えたら。


「・・・・・・月野はどうしました?」

「十夜が向かったと思いますが」


血の匂いを逃がすため、小野瀬は書斎の窓を開けた。





窓ガラスの割れる音と共に、月野は背筋が凍るような気配を察した。

振り返るのが怖い。

怖ず怖ずと、月野は後ろを振り返った。


「ヒッ!」


引き攣るような悲鳴を上げて、月野は後ずさる。

浦部―――なのだが、月野が知る浦部とは、違った。

赤い目が狂気に光り、顔も死人のように青白い。

開いた口から覗く牙と同じくらい、爪は鋭利に尖っている。