涙が出そうになる。
「こんなこと、どんな女もしてくれたことないけど・・・・・・なんか、安心する」
「・・・・・・うん。私、小さい頃、お母さんに抱きしめられて寝ると、安心できたの」
お母さん、その響きに鷹斗は目を伏せる。
母は、こんなふうに抱きしめてくれたことなどなかった。
いつも厳しく、甘えたりなど許されなくて―――。
本当に欲しかったのは、恋なんかじゃない。
寂しい時、苦しい時、母のような優しい腕で抱きしめてくれる―――ぬくもりだったんだ。
鷹斗は、それを知らず知らず、“恋”の相手に求めていたのかもしれない。
月野に縋るように、鷹斗は強く抱きしめる。
「・・・・・・月野ちゃん、好きだよ」
「ふふ。ありがとう」
月野は微笑みながら、鷹斗が眠るまで抱きしめ続けた。
「・・・・・・雨」
マンションを出ると、雨が降っていた。
傘を持って来ていないから、濡れて帰るしかない。
「風邪引くぞ」
そんな月野の目の前に、十夜が現れた。
全身を黒でまとめた彼の姿は、闇の中に紛れてしまいそうだった。
「どうして・・・・・・」
「椿が教えてくれた。多分、ここだろう、って」



