月野はポケットの中のメモを握り締めて、耐えず悩み続けていた。
雨が窓を叩く。
日記を開きかけた手が、止まる。
(私が気にすることじゃない)
桜太は自分を襲った相手。
でも、気になるんだ。
あの少年の、作り物のような笑顔が。
救ってと言って、一度だけ見せた、あの縋るような笑顔が。
(でも、ひとりで行くのは・・・・・・)
鷹斗に何かされたわけではないけれど、愛理の言葉が頭から離れない。
―――コンコン。
「月野ちゃん、お菓子食べない?」
椿が顔を出し、焼き菓子を差し出す。
「美鶴様はたくさん食べないし、十夜は甘いもの嫌いだし。かといって、小野瀬さんも食べるわけじゃないから」
焼きすぎたお菓子をテーブルに置き、椿は丸ごと一個、口に放り込む。
「美味しいですね」
ほど好い甘さで、お茶にも良く合う。



