愛理は扉を乱暴に開けて、鷹斗を月野の部屋から遠ざける。
「椿さんがお茶用意してくれる、って言ってたし、先に行くね?」
十夜に手を振り、愛理は騒ぐ鷹斗を連れていく。
「・・・・・・月野?」
「あ、うん。今行く」
月野は立ち上がり、部屋を一歩出る。
「綾織くん」
「ん?」
「私がいなくなったら―――ううん、なんでもない」
月野は笑顔を浮かべて、歩きだした。
十夜はその背を追いながら、複雑な心境でいた。
運命は、決して望んだ方向に廻ってくれない。
ぐるぐる激しく廻ったかと思えば、急にピタリと止まる。
今はちょうど、そんな時期だろうか?
5月に入ると、桜は散り、新緑がそろそろと姿を見せはじめる。
あれ以来、月野の周囲は平和だった。
だから、父親に電話はしないままでいた。
「なんでお前がいるんだ、鷹斗」



