手首の傷が痛々しくて、十夜はそっとキスを落とす。

ヴァンパイアなら、こんな傷、すぐに癒えるのに。


「・・・・・・」


小さな寝息が聞こえて、十夜は安堵の息をつく。


「月野、おやすみ。いい夢を」


彼女の唇にキスをして、十夜は立ち上がる。

紅茶の残るカップを手にして、部屋の明かりを消した。










キッチンにいた椿に、十夜はカップを渡す。


「月野ちゃんは?」

「眠った」

「そう。明日は、念のため学校を休ませるように、って美鶴様が」


カップを洗いながら、椿が告げる。


「わかった」

「それにしても、十夜があんなにも怒るの、初めて見たわ」


洗い物をすべて終えて、椿は濡れた手を拭く。


「俺にも、よくわからない」

「いいじゃない。お姫様を守る騎士みたいで、素敵よ?」