紅玉館に帰ると、椿が体を洗って綺麗にしろと言い、月野をバスルームへ押し込んだ。
言われた通り体を隅々まで洗った月野は、何度も何度も、うがいを繰り返していた。
「初めてのキスが、あれだなんて・・・・・・」
救いは、相手が美少年だったことだ。
それでも、気持ち悪いことに変わりはないが。
「はぁ・・・・・・」
鏡に映る自分の姿を見つめ、月野はため息を漏らす。
襲われたことより、今は十夜のことが気になる。
赤く染まった瞳と、桜太を殺してしまいそうな勢い。
月野の知る十夜じゃなかった。
(怖い、って思った)
浦部や桜太に抱いた恐怖とは、違う恐怖。
あれが、ヴァンパイアの十夜なのだろうか?
「月野ちゃん?」
「あ、今出ます」
椿に呼ばれ、月野は慌てて外へ出た。
「紅茶飲んで、落ち着いてね」



