「っ...詩織っ...かっ、花音が...」
少し離れたところで立ち尽くす私に気づいたお母さんが
泣きながら私の顔をみる。
「…の子は…ない…その子は………花音じゃない!!」
気がつくと、大声で叫んでいた。
「…詩織っ、その気持ちは、わかるけどっ...かっのん、なの」
お母さんが私に言ってくる。
「違う…違う違う違う!!花音じゃない!!花音じゃない!!花音じゃない!!」
違う。
花音じゃない。
「詩織…」
お母さんの声なんて聞こえない。
キキタクナイ。
「何で…何で!お母さんとお父さんは泣いてるの⁉︎その子は誰⁉︎ねえ⁉︎早く帰ろうよ!!花音が家で待ってるんだか…」
「詩織、いい加減にしなさい」
お父さんだ。
「この子は…花音なんだ」
違う。
「詩織が受け入れたくないのはわかるが…」
違う違う違う違う違う違う違う違う
「…っ受け入れたくないんじゃない!花音じゃないから言ってるの!」
自分でも驚く程、大きな声が出た。
「お母さんも、お父さんもわかってくれないなら、もういい!!」
私は続けてそう言って
病室を出た。
そして
向かったのは
家だった。
