「あら、あなた、最近越してこられた方よね?」

昼メシを買いにコンビニへ向かおうとドアに鍵をかけていると、隣室の住人に声をかけられた。

40才くらいの、ややふくよかな女性。

オレの右隣がマヤの部屋。

その隣がこの女性。

マヤの部屋は、オレと彼女の部屋に挟まれた格好である。

オレは作り笑いを返しつつも、警戒心を保ったまま、じっくりと彼女を観察する。
ひっつめ髪に黒縁の分厚いメガネ。

化粧っ気がなくて、両頬にいくつかのそばかすが散っている。

トレーナーの真ん中で、世界一有名なネズミが笑顔を見せている。

正直な話、ちっともキレイじゃない。

けど、かえって話しやすかった。

緊張感をもつ必要は皆無。

そっけなくするとかえって怪しまれるので、適当にコミュニケーションをとることにした。

「そうですそうです。昨日引っ越してきました。今後よろしくお願いします」