―in 秀華―


「優太」


秀華高校キャプテン、谷優太が振り返ると中学時代からの同級生が立っていた。


「……楓か」


青山楓―アオヤマ カエデ―

元光ヶ丘中バスケ部マネージャーで
現秀華高校バスケ部マネージャーだ。


「昨日、大和のところに行ったんでしょ?」

「あぁ。
相変わらず強かったよ。
栞奈の声を聞いた途端本領発揮しやがった」


本人は無意識だったらしいが。

あれが素でできるようになったら……

谷は幼なじみにベタ惚れの後輩を思い出して思わず笑った。


「手助けしてきたってわけ?
確かに可愛い後輩だけど。
いつか足下掬われるわよ」

「そうだな。
……でも、アイツは心配でたまらないんだよ」


楓は大きくため息をついた。


「暁弥のこと……ずっと黙ってるつもり?」

「アイツらの問題だ。
言うか言わないかは暁弥に任せる」


仲が良かった頃の後輩達を思い出し……谷は小さく息を吐いた。


「……また戻れればいいな。
あの頃みたいに……」


たった二人しかいない体育館で、谷の小さな声が響いた――