「一瞬だったんだよね……あれ。
あたしも何が起きたか分かんない。
……だけど、無駄な動きがなかった気がする」


無駄な動き……ね。


「大和は確かに谷先輩を抜いてたよ」

「栞奈……」

「だから、自信持って」


……そうだな。

栞奈の言う通りだ。

谷先輩が手加減してたとはいえ、俺はあの時先輩を抜いたんだ。

……今回だって……


「人は完璧じゃない。
……だから、どこかに抜け穴があるはず」


谷先輩の抜け穴……。

あの人のディフェンスの穴……。

……探してみるか。

ただ闇雲に進むことだけ考えずに、少しは頭を使おう。


「……ありがとな、栞奈」

「どういたしまして」


……頑張ろう。

先輩達を決勝戦の舞台へ。

……そして、このチワワとの約束を守るため。