一年生が本入部してからちょっと経ったある日のことだった。

バスケ部はいつものように放課後に部活をやっていた。


「十分休憩!!」


栞奈がタオルとドリンクを配ってくれる。

その合間に、一人の新入部員が俺に話しかけてきた。


「あの……高瀬先輩」

「何だ?」

「去年の大会、二年生でスタメンに出てたのって高瀬先輩ですか?」

「あぁ、そうだけど」


よくそんなこと知ってるな、と思った。

もしかして大会見に行ったのか?


「二年生って先輩だけだったんですか?
あと一人いませんでしたか?」


……俺は言葉に詰まった。

あと一人……きっとコイツが言ってるのは暁弥のことだ。

……アイツとはあれから一度も話してない。

ときどき廊下とかで見かけるけど、目を合わせようとしないし、もちろん話しかけることもない。


「今、部内にいる三年で去年スタメンだったのは大和だけだ」


空気を読んだムラケンが俺の代わりに答えてくれた。

でも、一年は引かなかった。

更に質問をしてくる。


「え……それどういうことですか?
もういないんですか?」

「あー……うん、いないのよ。
もう辞めちゃったからさ」


すると、一年は驚いたように目を見開かせた。