「何も覚えてないんです。」


正直に言った

けど


「僕は、酒を飲んで正体不明の女を抱く趣味は無い。」


社長は、そう言いきった。

でも・・・

どう考えても私が素面だったとは思えない。



「だったらなんだ、久利生さん、君は昨夜僕に言ったことも覚えていない・・・

と言うんだな?」


言った?何を?

そんな重大なことでも言ったの?


たぶん 大したことではないはず。

きっと社長の悪口とか・・・?



それより今は、昨夜の行動―――

言ったことよりやってしまったことの方が問題だ。




思ったのだが・・・


「本当に何も覚えてないのか?」


覚えてないものは覚えてないんです。


社長もしつこい・・・


「君が言ったんだぞ」


だから・・何を?

そんなにこだわるのは何?


だって

社長にしたって一夜の過ちでしかないでしょ?



「忘れてください。全部無かったことにしてください。」


私は覚えてないのですから。


そう言って

そそくさと社長の部屋を出て行こうとした






「忘れろだと!?」


そんな声と同時