「あ、それはですね・・・」
能成くんが言い掛け
「べ・別になんでもないよ。」
私が遮りすぐさま能成くんに
『言うな!』と視線を送ると
「そうそう、社長が副社長のことで・・・」
能成くんがうまく話を逸らし
由は『社長が』の一言で
「あ、俺、用事思い出した。
じゃあまたね。和ちゃん。」
と
そそくさと行ってしまった。
「なにあれ?」
私は行ってしまった由の背中を見送り
能成くんに聞いた。
「能成くんってば・・・
どんな魔法使ったの?」
いつも由にやられてばかりかと思ったら・・・
能成くんも成長したって訳?
「魔法じゃないですけど
芽室さんがよく使ってるんで
副社長には『社長』って言葉は
効きますね。」
芽室さんの真似ね?
「あ、俺も行きますね。
副社長を放っておくと
どこに行っちゃうか分からないんで・・・
芽室さんに見かけたときは必ず捕獲するようにって言われてるんです。」
見つけたら捕獲・・・される?
由ってばいつも会社でなにやってるんだろう?
「じゃあ、早く追いかけないと・・・」
「はい。じゃあ、また。
引越しの日は言ってください。
手伝いますから。」
「うん、ありがとう。」
能成くんは手を振り
由の逃げ去った方に駆けて行った。

