『そんなことないです』と言いたかったのに、恥ずかしさで私の言葉は朝の喧騒に消える。


「照れちゃってかわいいね。海斗には私から渡しておくから、もう教室に戻った方がいいよ」


気がつくと、朝のSHRまであまり時間がなかった。

綺麗な先輩にお礼を言って、私は教室へと急ぐ。



それにしても、ほんと綺麗な先輩だったな。

すごく優しいし、何て言うか、そう、品があるし。



教室に入るとクラスメイトが「おはよう」と声をかけてくれる。

千尋も「おはよう」と言って、私の机の横に来てくれた。


「どうしたの?遅刻ぎりぎりだったね」


そう聞く千尋に、王子の落し物を届けに3年Sクラスに行った話と、綺麗な先輩に会った話をした。

なんで王子のタイピンを私が持っていたかの経緯は省いたけど。