―――
―――――――


タバコの煙が春の霞にまぎれて消えた。


ああ、今日は入学式か。
なんか騒がしいと思った。


この部屋の窓からはあの桜並木が見下ろせる。

……変な気分。


見上げていたあの頃。
見下ろしている今。


カーテンを開けることはめったになかった。

でもなぜだろう。


この日は何となく、キザな言い方をするならば、運命的にカーテンは開かれていた。


桜の木の下を楽しそうな声を上げながら新入生が歩いて行く。

そんなたくさんの生徒の中から、俺は1人の少女を見つけた。