「九条君だっけ?聞こえなかったのかな?」 吐息があたしの耳元を掠める。 頗(すこぶ)る心地好くない、この聞き慣れた声。 仕舞いには、あたしの肩に顎を乗せ、耳朶を甘かじりする。 ――ゾワッ! 石のように固まっていたあたしに、ペキッと小さなヒビが入る。 『(ま、まさか……)』 「悪いけど、コレ。俺のなんだ。だから、失・せ・ろ!」 ―――THE END。 ふらつきながら、無言で屋上を後にする九条君。