優しい声が、あたしを呼ぶ。


でも、顔を上げてなんかやるもんですか。


あたしの寂しかった思いを…一瞬でも朔も味わえばいいんだわ。


…子どもっぽい考え方よね、こんなの。


だけど、ちょっとは分かってほしい。


あたしがあの人たちのことを思うのは、心配だからだって。 


好きだとか、そういう問題じゃないんだって。


…朔も、本当は解ってくれてるのに。


「優、顔上げて」


「いやよ」


「…どうしたら、上げてくれる?」


どうしたら…?


そんなの何にもない。


だって、ただの反抗心だもの。


あ、でも、だったら…。


「朔がもう少しワガママ言わないでくれたら」


「いいよ」


あたしは朔がそんなにあっさり了承するとは思ってなくて。


びっくりして顔を上げてしまった。


その瞬間…移ったのは朔のドアップ。


唇に、一瞬だけ。


大好きな温もりが触れた…。