『え、っと...あの...僕、なにかいたしました?』
「......うぅ...ひっぐ......」
『あ、あの...ごめんなさい...?』
「.........ひっぐ....」
顔を覗きこんで
様子をうかがっていると、
不意に千夏が、
俺の胸に飛び込んできた。
『え!?ちょ、どうしたんだよ』
千夏は俺のTシャツを
ぎゅっと握りしめ、顔を埋めている。
「......よ、かった...うぅ...」
『...え?...どうした?千夏。』
嗚咽を漏らしながら
ゆっくり言った。
「...私、雷太が心配で...、」
『...あぁ』
「......あのね?昨日、雷太は...私を、みんなを守ってくれたよね...?」
『......あぁ。』
「それは、すごく嬉しかった......。...けど、なんか...雷太じゃないみたいだった...」
『......。』
「...雷太が、遠くに行っちゃう気がして、すごく不安で...今日、学校来てなくて、メールも返信なかったから、ほんとにどこかに行っちゃったんじゃないかって...」
『......。』
「どこにも...行かないよね?ずっと一緒にいられるよね?ずっと仲よくいられるよね...?」
『...わからない。けど、ただひとつ言えんのは...お前を、千夏を独りにはしない...』
そう言って、千夏を
抱き締めようとした。
けど、俺は突き放した。
...俺の目線の先には、
ドアの隙間からひょっこり顔を出し
嬉しそうな目でこっちを見る
母親の姿があったのだ。
千夏もそれに気づくと、
三人の間に奇妙な静寂が
訪れたのであった...

