「エミル、エミルよ。私は間違っていた。父は復讐など望んでいなかったのだ。父は私に優しさを伝え、最後まで私を踏みとどませていた。エミルよ。私の中の憎悪、憎しみ、復讐心は父から受け取ったものではなかったのだ。それは私自身が生み出したものだったのだ。私はそれを抑えることが出来なかった。最後まで人であった父を犬に仕立て上げ、受け取った優しさを拒絶したのだ。父から受け取った優しさも、お前からの愛情も、全て私が生み出した憎しみで抑えつけてしまった。
エミル、エミルよ。お前が正しかったのだ。憎しみは破滅しか生まず、必要なのは、優しさだった。父の言葉は正しかったのだ。」

いくら嘆いても、彼の口から言葉が出ることはなかった。ただ、悲しげな遠吠えが、辺りにいつまでも響き渡るだけであった。