あの優しかった王子が、まさか、こんな顔をするとは。
王は今までにない、苦しみを抱えていた。
彼女はその全ての苦しみを、かわりにそのまま、背負ってあげたかった。しかし、それは出来ないことだった。それは彼女の死を持ってしても、出来ることのないように思えた。自分の無力さに老婆の体は悲鳴をあげた。
いっそ彼女は大声をあげて泣き出したかった。しかし、彼女はもう涙の一粒も見せなかった。


そして、口を真一文字に結びなおし、きっぱりと言った。

そこには紛いなりとも確かな母の顔があった。