「お前は私に嘘をついた。これに、間違いはないな?」

王は威圧をかけ、問い質した。


「なぜ…」


「なぜそれを…」


エミルの目からは涙がこぼれだした。


「間違いは、ないな?」

王は一切を無視した。無視しなければならなかったのだ。そのような光景を見たくはなかったのだ。彼は教育の全てをエミルから受けた。その身の振り方、礼儀作法、その他全てがエミルから授かったものだった。
彼女は常に厳しく、そして常に優しかった。両親もいない彼の唯一の親類は祖父だけであった。その祖父は彼に異常なまでの憎しみを持っていた。そのような環境の中で、彼は彼女の愛情にどれほど救われたことかわからなかった。数えきれないほどの愛情を、彼女は彼に注いでくれた。言うまでもなく、エミルは王にとって特別な存在だった。実母のようにしたった彼女が、あのような非人間的な、人道に反したことに関わっている。少なくとも黙認している。そんなことなど信じたくもなかった。