老婆は聖堂で熱心に祈りを捧げていた。

それが彼女の毎日の日課であり、大切な儀式だった。


「エミル!」


その大切な儀式を乱暴に王は遮った。
周りの者も驚き、固唾を飲むことしか出来なかった。

「いかが…いかがなさいました?」

エミルもまた王の豹変に目を疑った。


「エミル、お前は私にうそをついたな?」

王の剣幕はおさまることがない。
エミルは目を丸くするだけだった。


「お前が私に教えた父親は、私の生まれる前に死んだ。」


父親と聞いてエミルの顔は、一辺して悲痛を帯びた。


「しかし…実際の父親は…私の父親は、地下牢で未だ息をしている!」


老婆の目には涙がみるみる溜まっていった。