目覚めると王はベッドにいた。いつも通りの穏やかな朝が、彼を迎えいれた。いつも通りの朝の日差し。いつも通りの小鳥のさえずり。それはいつも通りの朝だった。
彼は起き上がり、部屋を見渡すと、いつも通りではない衣服が、椅子の上に置かれていた。

そうだ、私は王になったのだ。


それは王のきらびやかな衣服だった。
昨夜脱ぎ捨てた王冠とマントもキレイにまとめられてあった。

王は先代が身にまとっていたそれらを眺めて、苦々しい気持ちが沸くのを感じた。

昨夜の出来事は、全て夢だったのだろうか。

いや、そんなはずはない。
王はたしかに男を殺した。ありったけの恨み、憎しみを込めて。その死の感触は、ありありと彼の手に残っていた。

そして、先代の身に付けていたものを見ただけで、こんなにも憎悪が沸き立つのも、それが事実であったことを証明していた。
昨夜の出来事が無ければ、そんな感情を彼は毛頭持ち合わせてはいなかった。本来であれば、とても心優しく、温情に満ちた若者なのだ。