商人はその人からいろんなことを聞いていました。おひめさまは元気でいること、自分とおひめさまの間に子どもが出来たこと。商人はなんど死のうとしたかわかりません。しかし、商人は心に決めていました。
『死ぬ前におひめさまと、自分の子どもをひとめ見てから死のう。死んでしまったら、子どものかおは絶対に見ることができない。でも生きてさえいれば、いつかは会えるかもしれない。もしかしたら、その子が王さまになる日が来るかもしれない。生きてさえいればその日をむかえられる。生きてさえいれば、王さまになったその子に、人のやさしさを教えることが出来る。そして国の平和をねがうことができる。』
商人はどんなにつらいめにあっても、子どもににくしみや、うらみを教える気はありませんでした。
「その日まで、どうか待ってください。」
そう言って商人は横のその人に手を合わせました。その人はもう、ほこりだらけのかびだらけになっていました。