「お…王様!あんまり近付くとあぶねぇ!そいつはとんでもない罪人なんですよ!」

男の警告は、無論、王には聞こえない。

王は手の届く距離まで近付くと、男と同じ視線になるために屈んだ。
すると、男は呻きを止め、王の方に顔を向けた。


視線が合った。


王は噛み締めた。


この人は、


私の父だ。


衣服を着させられず、鎖に繋がれ、糞尿にまみれ、家畜のような食物を食べている、この人は、


私の父だ。



私の父は生きていた。


私の父は、犬として生きていた。


―犬の子め…!


私は



犬の子だった。