その階段を前にして、彼はしばらく固まってしまった。
しかし、それも束の間、暗闇から明かりもなく、騒々しい駆け音がダッと響くと、すぐさま彼の目の前に男が現れた。


「だ…誰だ!!」


暗闇に男の声が響き渡った。とても下品ながなり声だった。

危機的な状況ながらも王は冷静にいようと極めてつとめた。
足元のランプにそっと手をやり、顔に近付けると、


「私に見覚えはないか?」


落ち着いた威厳のある声でこたえた。

男はランプに照らされた気品のある顔立ちを眩しそうに見た。
そして、見つめていくうちに、男の焦った顔は、さらに歪んでいった。

「お…王様…」


弱々しく口にするとそのまま階段に手をついた。