城の壁は彼の目の前だけ、四角く色合いや質感が違うように見えた。
普通では気付かないかもしれない。
しかし、その時の彼は異変にとても敏感だった。
近付いて壁を手でなぞってみた。

やはり、ここだけが違う。

「これは、扉…か?」
試しに左手で押してみたが、壁は石の質感を手の平に与えるだけであった。
今度は足元にランプを置き、両手で力一杯押してみた。

すると、ズズーと重い音を立てて、扉は徐々に開いていった。
そして、扉が一通り開くと、彼の眼下には不気味な階段がさらなる暗闇へと続いていた。