気が付くと、彼の前には外へと続く門があった。開門されている門をくぐると、ひんやりとした夜風が彼をフワッと扇いだ。
月明かりの下に、笑い声や歌い声が聞こえる。
喜びや楽しみが満ち満ちた、心地のよい夜だ。
しかし、彼は落ち着いてられなかった。幻想的な夜が、とても儚く見えた。

何にかはわからないが、彼はもう戻ることは出来ないと思った。

何にかはわからないが、ざわざわと心が掻き乱れた。

なぜ、私は部屋を出てしまったのだろう?