―犬の子…!!


「やめろ!」


―犬の子…!!


「やめてくれ!」


…は………ない……

暴風にも似た祖父の声の中、彼はとても儚く今にも消えそうな声を聞いた。顔をあげて辺りを見回す。


…は……はない……

確かに聞こえる。しかし、襲いかかる暴風に敵わず、全てを聞き取ることは出来ない。


…は……ではない……

それは彼が今まで聞いたこともない声だった。しかし、どこか懐かしく、それでいて何かの意志を彼に伝えようとしていた。


まさか…と彼は思った。そして、何かただならぬ別の恐怖、危機的な気配に悪寒を感じた。

「誰だ!」

思わず声をあげたがこたえる様子は毛頭ない。


「誰だ!」


もう一度叫んだと同時に、彼は目覚めた。